包丁コラム
本刃付及びハマグリ刃について
2019年1月15日その他
本刃付けに関しては、様々なサイトで説明されていますが、弊社としても本刃付けについてまとめておきたいと思います。図も作成しましたので、よりご理解が深まればと考えております。
まず、本刃付の意味ですが、本刃付とは主に小売店で施す工程で、包丁をより切れる状態に研ぐことを意味します。
図を参照していただくとより理解が深まると思いますので、図について説明させていただきます。
真ん中の線より上が片刃、真ん中の線より下が両刃の包丁の説明図です。
そして、真ん中やや左の線より左が、弊社のような問屋から小売店納品時の刃の状態、その右がいわゆる一般的な本刃付の状態、その右がハマグリ刃の本刃付の状態となります。
図の左の小売店納品時の刃の状態は、刃先に小刃(こば)がある状態です。堺の刃付職人は小刃をつけて問屋へ納品します。これは関や武生などの他産地も同様で、作り手は小刃をつけて納品することが殆どです。この状態でも切れますが、この後、小売店で本刃付の工程を施し、図のように、より鋭利な状態に仕上げます。これにより切れ味が増すと共に、長切れするようになります。
本刃付の工程は研ぎ直し(修理)と同様で、荒砥石を使っておおまかな形を作り、中砥石及び仕上げ砥石で仕上げることが殆どです。小売店によっては、天然砥石で仕上げたり、歪みをとったり、えくぼを無くしたり、(片刃の場合ですが)裏糸がきれいに出るように整えたりして、より完璧な状態で本刃付をするお店もあり、そういったお店は良質な本刃付をしてくれると言えるでしょう。ただ、本刃付は拘れば拘るほど時間と手間がかかるので、良質な本刃付をしてくれるお店ほど高価になると言えます。
次にハマグリ刃の本刃付についてです。
図の一番右側がハマグリ刃の本刃付の状態です。真ん中の本刃付けよりやや角度を立てて本刃付を施すことで、図で丸をしている箇所のように、刃がハマグリ状になっていることから、ハマグリ刃と呼ばれています。やや角度を立てて本刃付を施すので、真ん中の本刃付に比べて鋭利でなくなり、切れ止むのは早くなりますが、欠けにくくなるのが特徴です。つまり、ハマグリ刃の本刃付を施すのは、欠けさせたくない包丁であることが多く、例えば、骨を切る出刃などがこれに当たると言えます。また、ブランドによっては、出刃以外でもハマグリ刃で刃をつけているところもあり、これは作り手の拘りだと言えるでしょう。
片刃の包丁で言いますと、鍛冶師・刃付師・柄付け・本刃付、この四位のどのピースが不完全でも良質は包丁は出来ません。つまりは、この四位が一体となったとき、はじめて良質な包丁の完成となります。これは両刃の包丁も同様です。
本刃付一つとっても非常に奥が深く、小売店によって拘りも異なり、答えがないものですので、追求されていくと面白いかもしれませんね。