包丁コラム
砥石の性能を決める3要素
2018年6月9日砥石
以前に、砥石・研ぎ方の基本についてコラムを書かせていただきましたが、研ぐことが面白くなってくると、砥石についてもっと深く知りたいと思うようになってくると思います。今回は、砥石についてもう少し踏み込んだ内容をご紹介したいと思います。
砥石は大きく分けて、荒砥石・中砥石・仕上砥石に分かれるという話をしましたが、今回は、別の見方で、砥石の性能を決める3つの要素についてお話したいと思います。
砥石の性能は大きく3つの要素によって決まると言われており、それが、
1.砥粒・・・刃物を削る砥石の粒子の種類
2.製法・・・砥粒同士の結合の仕方
3.気孔・・・砥粒と結合剤の間の隙間
になります。
1.砥粒について
砥粒の役割は、刃物に当たったときに、刃物を削っていくことです。砥粒は刃物に当たって、刃物を削っていくと同時に自身も摩耗していき、この摩耗のしにくさを靭性と呼びます。
砥粒は大きく分けてアルミナ系と炭化ケイ素系に大きく分かれます。
砥粒の性質を決める大きな要素は固さと摩耗のしにくさですが、大まかに言うと、固さが優れているのが炭化ケイ素系で、摩耗しにくいのがアルミナ系です。
刃物用砥石で代表的な砥粒が、アルミナ系ではホワイトアルミナと呼ばれるWAやアルミナと呼ばれるA、代表的な炭化ケイ素系ではグリーンカーボンと呼ばれるGCとカーボンと呼ばれるCがあります。
大まかな話をすると、Cよりも純度の高いものがGCで、GCはその名の通り緑色をしています。GCは固いので主に荒砥石に用いられます。
一方で、WAは中砥石や仕上げ砥石に用いられることが多く、摩耗しにくいので、ステンレスと相性が良いとされています。
よく、砥石の色で、砥粒を見分けると言いますが、砥石は着色されていることが多いので、砥石の色で砥粒を判別するのは難しいと思います。WAやGCは比較的値段が高い(価格的にはGCよりWAが高いそうです)ので、Aが混ざっていたり、Cが用いられていたりもします。
2.製法(結合剤)について
最近の主流となっている砥石の製法は、ビトリファイドとレジノイドとマグネシアの3つが挙げられます。
この3つの製法は大きく異なるのですが、製法に結合剤の名前が用いられていることから、砥石の性能を決める2つ目の要素は結合剤という人もいます。
簡単に言うと、ビトリファイドは焼いて作る砥石です。砥粒同士を保持する力が強いので、研磨力が優れているのが特徴で、荒砥石や中砥石の主な製法になります。砥石自体が固くなるので、形があまり変わらないのが特徴なのですが、固いが故に弾性力は低くなります。砥粒がGCの場合はビトリファイド製法を用いることが多いようです。最近はこちらの製法が主流になりつつあるようです。
一方でレジノイドは、比較的低温で熟成して作る製法で弾性力があるのが特徴です。こちらは、使用する前に水に浸す必要がないので、スムーズに研ぎに入れます。
マグネシアは乾燥させて固める製法です。比較的研磨力があり、軟らかいのが特徴です。こちらも水につけずにすぐに使用できます。一方で水につけておくと溶けてしまうので注意が必要です。昨今人気のセラミック砥石はこちらの製法が多いようです。
3.気孔について
砥石の性能を決める最後が気孔です。砥粒が刃物を削り包丁を研いでいくのですが、砥粒が機能しなくなると屑になり、気孔に入っていきます。そのため、適度に気孔がある方が砥石が目詰まりせずに良いとされています。
ビトリファイドで作った砥石は、気孔が多いので手研ぎの砥石にはあまり関係ありませんが、研ぎ師などが使用する回転砥石などでは、温度が上がって焼き戻りすることが少なくなります。
今回は砥石の性能を決める3要素の導入部分だけご紹介しました。より詳細についてお知りになりたい場合は、砥石メーカーなどがご案内しているケースが多いのでそういったサイトも探してみるのも良いかもしれませんね。次回は、砥石の5因子についてお話しようと思います。