包丁コラム
ステンレス鋼材について
2017年5月25日その他
前回は、炭素鋼について書きましたので今日はステンレス鋼のご紹介です。ステンレス鋼は、炭素鋼にクロームを加えたもので、クロームにより切れ止みにくくなり、また錆びにくくなります。炭素鋼に比べ切れ味は劣るのですが、錆びにくいという点で、人気を集めています。
和包丁の主な原材料である白鋼や青鋼を製造している日立金属が製造しているステンレス鋼が銀紙三号です。銀紙三号は、硬度が炭素系の和包丁に近い為、和包丁の中でよく使われるステンレス鋼材です。粘りがある為に研ぎにくい側面がありますが、ステンレスの中では、まだ研ぎ易くなっています。また、錆びに強いのも大きな特徴です。
また、日立金属とは別で武生特殊鋼材という会社が製造しているいくつかのステンレス系の素材も存在します。代表的な鋼材はV金1号とV金10号ですが、このVはVirgin SteelのVです。V金は、錆びにくく、長切れすると評判です。
まずは、V金1号ですが、これは炭素含有量が1%と刃物鋼材にしては炭素を多く含んでおり、またモリブデンも含有されているため、高硬度の焼き入れが可能となっております。また、モリブデンとクロームを含んでいるので、長切れするようになります。
そして、純度の高い原料に、炭素、クローム、モリブデン、ヴァナジウム、コバルトを加えた高炭素ステンレス鋼がV金10号です。希少金属のコバルトにより、粘り強く、また耐磨耗性を高めます。錆に強く、切味が長く続くのが特徴です。小売店にもよりますが、一般的にはV金10号の方が好まれる傾向にあります。
ステンレス鋼材に乗じてもう一つご紹介しておきたいのが粉末ハイス鋼です。
粉末ハイス鋼はハイスピード鋼の略称で、元々は切削工具で使われていたのですが、近年包丁に使われ人気が出るようになってきました。
切削工具に使われていたことから、非常に硬いのが特徴です。
粉末ハイス鋼は、粉末冶金製法を用いて製造しれるのが特徴です。粉末冶金製法とは、材料となる粉末を型に入れ、熱と圧力をかけて焼き固める手法です。この製法により、組織が非常に細かくなるので、硬く、切味に優れ、また長切れすると言われています。
次回は砥石についてお話する予定です。